特集
ブレンダーとパティシエ――。超一流の“調和”

“ジャパニーズ”を超える、唯一無二のブランド

■“ジャパナイズ”とは何か

 

田中 我々がつくるウイスキーと鎧塚さんのデザートの共通点といえば、どちらも海外から来たものですが、鎧塚さんは日本人の舌に合わせるために何か特別な工夫をされていますか?

 

鎧塚 僕の場合、日本人に合わせるという意識はまったくないですね。ヨーロッパに行っていたときも、その国に合うように変えることはありませんでした。僕は、バランスさえ取れていれば、世界中どこでもいいものは勝負できると思っているんです。

 

田中 自分の味で勝負する。

 

鎧塚 はい。ただ、先ほど“いびつ”という話もしましたけど、実は柔軟なところもあるんです。要は、絶対に動かしてはいけない幹の部分はしっかりして、枝葉の部分は柔軟にすることが大事。吸収して混ぜ込んでいく柔軟さと頑なに守り続ける“いびつさ”。この両方が必要です。

 

これからも世界を相手にするつもりですが、絶対に動かさない幹の部分は、どの国であっても変えるつもりはありません。田中さんも同じじゃないですか?

 

画像:田中城太

田中 ええ、私もまったく同じです。よく日本人は甘みが好きという話もありますが、美味しいものは世界共通で、国による違いというより、その人の育った環境による違いだと思うのです。今、ジャパニーズウイスキーが国際的に評価されていますが、海外の人から聞こえてくるのは、ジャパニーズウイスキーは高品質で調和が取れていて、バランスがすごくいいということです。

 

世界中からジャパニーズウイスキーに対して、さまざまな観点から注目のされ方をしていて、自分たちのつくっているウイスキーのアイデンティティーとは何かというテーマで話をする機会が増えました。

 

私自身の考えとしては、もともと洋物のウイスキーというなかで、「俺たちのものは違う」「ほかのものとはこう違う」という特長を持って、美味しいものとして自信を持って出せるか否かということだと思います。

 

それは日本人が好きな嗜好、フランス人が好きな嗜好の交わっている部分だと思っていて、世界共通で美味しいというか、美味しいものを追求したら、国の違いなんて関係ないというのが私の実感です。

 

鎧塚さんも美味しいものができたら、世界中の人が認めてくれるということを体験されてきたのだと思います。

 

鎧塚 そうですね、僕がなんでカカオ農園をやったかというと、「これが僕の味です。どうぞ召し上がってください」という自信なんです。

 

例えば、ジャン=ポール・エヴァンさんとかは、ショコラティエとして、20代の頃からチョコに命をかけていて、その人たちと肩を並べるには、唯一無二のものを作らなければならない。それで畑を始めたんですよ。今は絶対の自信があります。

 

もちろん、好みは国ではなく、人によって違いますから、どこかの国に合わせるのではなく、自分の味を信じてやるしかないんですよね。

 

画像:3

田中 何かに寄せるのではなく、自分たちが美味しいと思えるものを突き詰める。そうすれば、全員とは言わなくても、必ず喜んでくれる人がいる。

 

私がこの仕事にやりがいを感じている原点は、アメリカに住んでいたときに見てきた、樽から直接注がれたウイスキーを味わった人の笑顔なのです。その笑顔を見たいから、原酒の味わいが感じられるこの「富士山麓 樽熟原酒50°」をつくりたかったし、これからも皆さんに喜んでもらえるウイスキーをつくり続けることを強く心に誓っています。

 

鎧塚 やっぱり、人に喜んでもらいたいということが、ものづくりの基本ですよね。田中さんはよくおしゃべりになられますけど、それも人を喜ばせたいからでしょう。

 

田中 あ、しゃべり過ぎてしまって、すみません(笑)。

 

鎧塚 いえいえ、違うんです。料理人の中にはあまり話さない方もいますが、僕もたくさん話して人に喜んでもらいたいという想いがあるんです。そして、人の喜びを自分の喜びに転化する。それがないと、きっとこの仕事は続けられないと思います。

 

田中 ものづくりに対する考え方だけでなく、お客様に対する姿勢についても共感できてうれしいです(笑)。今日はいろいろとインスピレーションを受けてわくわくするような話ができて、とても楽しかったです。笑顔のひろがるウイスキーづくりへの意欲にまた火がつきました。

 

鎧塚 大の大人が肩を並べてチョコレートの話を熱く語ってしまいましたね。でも、こういう時間をつくれるのが、ウイスキーやチョコレートの良さですよね。

 

 

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