特集
国産靴は“文化”だ!◆SESSION 03:「靴磨き職人列伝」

輝きを放つ5人のシューシャイナー

◆靴磨きは究極の接客業


長谷川裕也さんはもともと路上で磨いていたのだが、靴のためにもじっくり時間をかけて磨くことを追求し、南青山で店舗を構えたという稀有な職人だ。昔からバーカウンターみたいな店舗にしたかったそうで、理想が叶った今、カウンター越しに話をしながら、お客様の靴を磨く独自のスタイルを確立している。

「Brift H」(ブリフトアッシュ)では、一足あたり45分~1時間かけて磨くため、ドリンクサービスも行っている。いろいろなお客さんと会話ができる職業だが、印象に残っている話がある。「ビジネスマンの方で、長年苦楽をともにした靴を捨てる前にぜひ磨いてほしい。そういって持ち込まれた靴があったんです。雨の日も暑い日もずっと主人を支えてきた靴なんでしょうね。いわば、“死化粧”。いつもより気持ちを込めて磨きました」と語ってくれた長谷川さん。

それにしても彼はスマートな職人だ。これまでの職人のイメージとは違い、スーツを着て磨くシューシャイナーなのだ。別に奇をてらっているのではなく、接客業の究極を目指しているのだ。

 

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長谷川さんが路上で靴を磨き出したのは20歳のとき。丸の内や品川で腕を磨いて、2008年に自分の店をオープンした

 

さて、磨き方の手順は、クリーナーで汚れを落とし、乳化性の靴クリームで磨き、ワックスで磨き上げるという王道のスタイル。ただし、サンドペーパーでコバを磨いてインクを塗布してくれるのは嬉しいサービスだ。

長谷川さんは靴クリームを究めた人物で、市販されているあらゆるブランドの特徴が頭に入っている。つまり長所も短所も深く理解しているのである。100%満足できる靴クリームがないため、化粧品会社にオリジナルの靴クリームを作らせたというこだわりぶりだ。ちなみにこの靴クリームも購入できる。

 

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お客さんの自宅に上がって、まとめて磨くこともあるという長谷川さん。“お抱えシューシャイナー”として信頼されているのも、高い技術の証

 

◆「Brift H」、長谷川裕也のワザ


「倉野さんはあまりピカピカに仕上げないのが好みでしたよね」と、さりげなく好みを把握している長谷川さん。古い「CHURCH'S」の革が持つ透明感を生かして、適度にワックスを加えて磨いてくれた。目の前でじっくり靴磨きを見られる幸せは靴好きにはたまらない時間なのだ。

画像:4個目

長谷川さんは購入してすぐ磨くことをすすめている。新品の靴でも最初にしシューシャイナーで手を入れることで、ツヤが増すという

 

DATA

Brifit H┃青山
住所:東京都港区南青山6-3-11 PAN南青山204
TEL:03-3797-0373
営業時間:12~20時
定休日:火曜
料金:当日/4000円、翌日以降/3300円、一週間以降/2700円
URL:http://brift-h.com ※外部サイト

 

 

 

 

画像:千葉スペシャル┃千葉尊 靴磨き集団の名物親方

◆手入れの行き届いた靴が“本当にいい靴”


交通会館の敷地内にはビジネスマンの長蛇の列ができている。千葉尊親方が率いる「千葉スペシャル」に靴を磨いてもらうために並んでいるのである。しかし、「千葉スペシャル」では親方に磨いてもらえるかは運次第だ。

というのも、4人の靴磨き職人がいるが指名はできず、本当に並んだ順番なのだ。取材当日、親方に当たるとは限らないのだが、運よく磨いてもらえた!

「あまりゴシゴシ磨いたら駄目なんだよ。磨いて柔らかくして足の形に合っているものが“本当にいい靴”なんだ。しなやかさがないとな」と千葉親方。

 

画像:6個目

「千葉スペシャル」は8割以上がリピーター。毎週違う靴を履いて訪れる人もいるという

 

可動式のテーブルの引き出しを開けると、保湿性のあるオリジナルの靴クリームがズラリと並んでいた。その靴クリームにシュシュッとエタノールをときどき混ぜて、ササッと磨いていく。手の動きにまったく無駄がない、さすがプロ中のプロだ。

革のためにも同じところを3回磨かないそうだ。コバインクも手際よくブラシで塗ってくれた。親方にこれまで磨いたなかで磨き甲斐のあった靴を聞いたところ、「Edward Green」「CHURCH'S」「Santoni」「a.testoni」。国産だと「SCOTCHGRAIN」「MIYAGI KOGYO」。とくに「SCOTCHGRAIN」の一番上のクラスの革は素晴らしいとのこと。ちなみに「SCOTCHGRAIN」の社長も磨きに来るとか。

磨く時間は10分~15分程度。4人の職人で1日に150人前後の靴を磨くこともあるそうだ。ビジネスマンにとって「千葉スペシャル」は欠かせない存在だ。何度か通えば運よく親方に磨いてもらえるはず。

 

 

画像:7個目

千葉さんの磨きはやはり、他の職人とは違う。話好きの千葉さんは磨いている間も良く話す。常連が通い続けるのも納得だ

 

◆「千葉スペシャル」、千葉尊のワザ


磨いていると上品な光沢がみるみる出てきた。オリジナルの靴クリームの成分は教えてもらえなかったが、保湿効果があり、革の奥にも栄養が浸透させている。日々の手入れは、かたく絞った濡れた布で抜き取るだけ。靴クリームで磨いては駄目。1~2ヵ月したら磨いてもらうのが理想だ。

 

画像:8個目

磨きながら自宅での手入れの仕方や保管方法なども教えてくれるので勉強になる。千葉さんの人柄が人を惹きつける

 

DATA

千葉スペシャル┃有楽町
住所:東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館前
TEL:080-5374-2233
営業時間:9~19時(土曜は9時30分~19時)
定休日:日曜・祝日
URL:http://www.kotsukaikan.co.jp/clinic_service/service/307/ ※外部サイト

 

 

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この情報は2016年6月1日現在のものです。

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