連載
神々は細部に宿る #001:WILDSWANS

「WILDSWANS」の美しいコバはユーザーファーストで考え抜いたディテールの象徴

「良いモノ」とはなんなのだろうか? 長く使えるモノ、今まで見たことがないモノ、コスパの良いモノ、みんなが使っているモノ――。ここで言う良いモノとは、作り手のこだわりが伝わってくるモノだ。

 

こだわりはディテールに現れ、ディテールにこだわって作られたモノは、カッコ良くて美しい。そして、細部を極めることで全体にオーラを纏う。本連載では、そんな作り手たちの細部のこだわりにフォーカスすることこそが、モノの真価を見定めることに不可欠だということをお伝えしたい。

 

● ● ●

 

新連載の最初に取り上げるのは「ワイルドスワンズ」。コバや素材をはじめとする細部へのこだわりに定評がある革製品ブランドだ。そのディテールを採用するにいたった背景には、どんな理由や思いがあるのか。わかりやすく解説しよう。

 

 

撮影:高橋宏樹 文:平格彦 ディレクション:宇田川雄一

 

WILDSWANS

ワイルドスワンズ

WILDSWANS

「ワイルドスワンズ」は1998年に創業した日本の革製品ブランド。茨城県稲敷郡河内町にアトリエを構えている。独自の哲学でこだわりと時間を惜しみなく注ぎ込み、完成度の高いプロダクトを生産。熱い支持者が多く、限定品などが発売されるタイミングでは銀座と京都の旗艦店に行列ができる。

画像:ワイルドスワンズ代表・鴻野弘好氏

■独学で始めたからこそ徹底して試行錯誤した成果

 

圧倒的な完成度の革小物で支持を集めている「ワイルドスワンズ」だが、スタートはまったくの素人という状態から。今年話題を集めたビジネス書『ルーキー・スマート』(リズ・ワイズマン著/海と月社)さながらに、知識がないからこそ独自の視点で試行錯誤を繰り返し、革新的とも言えるディテールに辿り着いた。

 

その結論を導く絶対条件は「ユーザーファースト」。

 

革製品の価値は時間経過に比例するという哲学のもと、10年でも20年でも使い続けられる仕様を追求していると代表の鴻野弘好(写真上)は語る。

 

「自分たちの製品だけでなく、他社のブランドも含めていろいろと思考を重ね実際に試しながら、どんな工夫ができるのかを常に考えています」

 

画像:世界中のタンナーから厳選した革素材

「ワイルドスワンズ」ではブライドルレザーやコードバンなどあらゆる素材で試行錯誤し、納得できる品質のものだけを採用

 

 

全方位的に耐久性を追求しているが、わかりやすい要素のひとつが素材だ。「ワイルドスワンズ」では、サドルプルアップ、クリスペルカーフ、シュランケンカーフ、ミネルバボックス・リスシオ、クロコダイルなどを定番素材として使用しているが、いずれも世界中のタンナーから厳選。納得する品質の革だけを選んでいる。

 

2016年からイギリスの老舗タンナー、ベイカー社のフルグレインブライドルレザーも追加。一般的なブライドルレザーはワックスや染料を浸透させるために銀面 (毛が生えていた面) を擦り取るが、フルグレインは銀面をそのまま残すために圧倒的な耐久性を実現している。それでもワックスなどが浸透するのは、2000年前の伝統的なレシピをそのまま再現し、手間暇を掛けて鞣しているからだ。

 

2017年の銀座店9周年を機に、コードバンも準定番化したが、アメリカのホーウィン社製を使用している。その理由は、他社にはない厚みがあり、コードバン本来のモチモチした質感が味わえるから。厚さがあるということで耐久性も非常に優れている。ブランドの哲学と相性が良いレザーの選定は、原価が上昇しても決して妥協することはない。

 

 

Next≫≫≫“コバ”へのこだわりを見れば完成度の高さは明白

画像:スマートフォンはそのまま“下”へスクロール

TOP