連載
クラフトビールの新潮流

再燃の兆し――クラフトビールの明るい未来

いまやクラフトビールは、コンビニやスーパーでも見かけるようになり、ビール愛好家たちにとって、ひとつの選択肢として地位を確立した。一昨年に大ムーブメントを巻き起こし、確実なファンを獲得したものの、大衆飲料としてのポジションはまだ遠い。

 

そんな状況のなか、2017年7月に「アサヒ」がクラフトビール事業に本格参入を表明し、10億円を費やし大規模なブルワリーを開設された。これにより、「キリン」「サントリー」「サッポロ」の大手4社がクラフトビール事業参画に足並みを揃えた。今まさに、クラフトビールは新しい局面を迎えようとしているのだ。

 

「とりあえず、生!」の一般消費者、そしてビール業界を、クラフトビールはどう牽引するのか……。クラフトビールをめぐる最前線を追った。

 

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大手参入をきっかけに、クラフトビールムーブメントは今後どう変化していくのか? 本連載第一回目では、2011年からのこの潮流をいち早くキャッチし、情報を発信しているクラフトビールの情報サイト「クラフトビール東京」主宰の川野亮氏に話を聞いた。

 

撮影:高橋宏樹 文:橋村望 撮影協力:WIZ CRAFT BEERandFOOD

川野亮(かわの・りょう)

クラフトビール東京

川野亮(かわの・りょう)

クラフトビールを多くの人に飲んでもらいたいという願いから、Webサイトでの情報発信を決心。クラフトビールが飲めるお店紹介サイト「クラフトビール東京」をオープンした。アクセス数は月間20万PV、ユーザー数6万人。監修に『もっと知りたい! クラフトビール』(2017年/エイムック)などがある。

◆地ビールからクラフトビールへ! 少数派たちの熱きクラフトマンシップ

 

■そもそもクラフトビールとは何か?

 

コンビニやスーパーでの取り扱い銘柄が増え、よく見かけるようになったクラフトビール。だが、ひと昔前、観光地などでお土産用として販売されていた「地ビール」を覚えているだろうか? よく混同する人が多いが「クラフトビール」と「地ビール」は似て非なるものだと川野氏は語る。

 

「『地ビール』とは、簡単に言えば「地元で作った、その土地特有のビール」という意味合いです。一方、『クラフトビール』は、どこで造ったかではなく、ビールの味わいに焦点を当て、工芸品(Craft)のような品質の高さを目指し、醸造家が志やこだわりを持って造ったビールのことです」

 

1994年の酒税法改定により、大手ビールメーカー以外でもビールが造りやすくなり、酒蔵や酒販店、あるいは観光業などさまざまな会社が地ビールを造るようになり、地ビールブームが到来した。

 

一時的に売れ行きが良かったが、2000年を迎えるころにはブームが去ったという。

 

「当時は、主にドイツから醸造技師を招いてビール造りを学んでいましたが、黎明期ということもあり、醸造技術はまだ発展途上でした。そのため、やや品質の低いものも見受けられたそうです。値段の高さに品質が見合わないということで、消費者が離れた結果、最盛期には約300あったブルワリーが180程度まで減り、2004年には地ビールの出荷量が過去最低を記録したそうです」

 

画像:「ビールの材料は輸入が多く味が画一的なので、地ビールは地元の野菜や果物も入れて差を付けていた」と川野氏は解説する

「ビールの材料である麦芽やホップは基本的に輸入品。地ビールでは差を出すために地元で採れた野菜や果物を用いて、特色を出しているブルワリーもあります」と解説する川野氏

 

 

■地ビールの低迷から、新しいクラフトビールの時代へ突入!

 

地ビールブームが去ったあとも、ビール造りを続けたブルワリーがあった。そして、2005年ごろから生産量も上向きになっていく。

 

「2004年ごろから、日本でもビール業界で『クラフトビール』という言葉が使われ始めました。ビアジャーナリストの藤原ヒロユキさんは、2004年出版の著書でクラフトビールという言葉を使っています。2004年、長野県で創業した『志賀高原ビール』の醸造責任者である佐藤栄吾さんは、2006年の雑誌インタビュー記事で『地ビールという言葉は好きじゃない。目標は、自分たちが飲みたい、自分たちしか造れないクラフトビールだ』と語っています。

 

『志賀高原ビール』が造り始めたのは、アメリカのクラフトビールで主流だったペールエールやIPAなど、当時の日本ではまだ珍しいスタイルのビール。その新しい味わいが多くのビールファンに受け入れられたのです」

 

アメリカでは、均一な味わいのビールを大量に造って安く売る大手ビールメーカーに対抗して、1980年代以降、中小規模の醸造所が少量生産でクラフトマンシップを発揮した多彩なビールを造り始めた。そのムーブメントが世界的に盛り上がり「クラフトビール」という文化が確立した。

 

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