連載
熱男式! 着こなしの王道セオリー実践講座vol.36

服飾ライター倉野路凡と“一生モノ”のイイ関係

◆“一生モノ”はつまらないモノ?

一般的に“一生モノ”というと、長期間にわたって使い続けられるクオリティと使いやすさ、飽きのこない“中庸的な”デザインが融合したものが多い。そのすべての要素を兼ね備えたものは結果的に有名ブランドのロングセラーモデルに多く見られる。いわゆる定番と言われるものだ。

 

しかし、スーツだと話は違ってくる。と言うのもトレンドを意識したデザインが多く、数年経つと着るのが恥ずかしくなってしまうからだ。スーツの場合は、それが数十万する海外の有名ブランドであっても、一生モノにするのはやはり難しい。

 

その点、アクセサリーなどの小物類は一生モノとして使えることが多い。重衣料にくらべてサイズが小さく、あまり目立たないということもあるが、それは本質的にファッションやクロージングの主役ではないからだ。

 

だから、あえて“ときめき重視”で個性的なデザインのものを選んでもいい。無個性で無難な一生モノも悪くないが、高揚感を与えてくれる一生モノも楽しいものだ。

画像:靴(「チャーチ」のフルブローグ)/時計(エベル1911)

倉野さん私物のチャーチ(左)とエベル(右)。どちらもていねいに手入れされており、倉野さんの愛着を感じる

◆倉野路凡的、“一生モノ”選びの視点
クローゼットの服や小物を見ると、定番アイテムが多いのに気づく。もともとアイビーやブリティッシュトラッドが好きなこともあるが、昔買ったツイードジャケットや英国の「チャーチ」の靴などもやはり定番ものだ。

 

この「チャーチ」のフルブローグは昔の木型のものだが、現役でまだ履き続けている。何十回と履いたこの靴はもはや相棒のような存在だ。

 

腕時計のお気に入りは1990年代に買った自動巻きの「エベル」。当時の「エベル」を代表する「エベル1911」という定番モデルではあるが、デザインはスポーティーエレガンスでモダンなもの。

 

ただ、ハッキリ言ってこの時計はツイードジャケットには似合わないし、着る服を選んでしまう。しかしボク的には手放したくない一生モノで、着用するといまだに高揚感があるのだ。

 

“一生モノ”は飽きのこない“定番モノ”を選ぶのが賢明ではあるが、ときめき感や高揚感で選んでもかまわない。要は一生付き合っていく気持ちになれるかどうかなのである。

画像:倉野路凡

この日、倉野さんが着用していた帽子も、オーダーメイドで仕立てたお気に入りの逸品なのだそう

◆身につけるものの選択には生き様があらわれる

ボクが一生モノ選ぶ際の最初の入り口は「心惹かれるかどうか」「美しいかどうか」という単純なものなのだが、ときとしてずる賢く、中古で売っても高値で取引される人気のアイテムを選ぶことだってある。とりあえず使ってみて、気に入らなければ高く売るという都合のいい選び方だ。

 

しかし、そういった市場で人気の高いものというのは、残念ながらつい手放してしまうことが多く、手もとに残りにくい。つまり間違った選び方なのだ。

 

少々大袈裟だが、自分が選ぶ一生モノは「自分の生き方」を凝縮したものと考えている。だから買う直前まで迷うし、本当にほしいのかどうか何度も問い直している。一生モノを選ぶことは自分の生き方の再確認でもあるのだ。

 

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この道20余年、ファッションを通して自分を見つめ続けてきた倉野氏の審美眼にかなったのは一体どんなモノなのかと気になる読者も多いことだろう。そこで、倉野氏が実際に愛用している一生モノを、それにまつわるエピソードとともに3点紹介してもらった。

 

 

>>>倉野路凡の審美眼に選ばれた“一生モノ”3選

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