連載
名刺を捨てた男◆第20回

ラッパー・DOTAMAは生涯サラリーマン。“マインドサラリーマンラッパー”を謳う理由

一体、サラリーマンとはなんなのか。かつて会社勤めをしていた著名人たちが会社員時代を語る――。“名刺を捨てた男たち” は当時、何を考えながら働いていたのか。仕事へのモチベーション、プライベートとの比重、そして夢への挑戦……。

 

ひとつだけ言えるのは、全身全霊その職務に取り組み、中途半端な仕事はしなかった。そして、その経験が活きているからこそ、彼らの「今」がある。その核心にせまるべく、「For M」編集部は“名刺を捨てた男たち”に単独インタビューを敢行した。

 

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今回は、『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)への出演を機に、一躍全国区までその名を上げたラッパー・DOTAMAが登場! 教職家庭という、一見ヒップホップと縁遠い家庭環境で育ちながら、学生時代には生徒会を務めた真面目な男は、なぜ日本のヒップホップ界で現在の位置を勝ち得たのか。

 

 

そこには、組織に誓う忠誠心と、“マインドサラリーマンラッパー”たる所以があった。インタビュー後半には、「For M」オリジナルフリースタイルを披露!

 

写真:佐坂和也 文:富山英三郎

DOTAMA

ラッパー

DOTAMA

1984年、栃木県生まれ。教職家庭に三兄弟の長男として生まれる。地元の高校を卒業後、栃木県を中心に展開するホームセンターに就職。サラリーマンとして勤めながら、ライブ活動を行い、ラップバトルにも出場。大きなインパクトと目覚ましい戦績を残して来た。2010年に1stアルバム『音楽ワルキューレ』をリリース。その後も精力的にレコーディングを続け、2016年には『DOTAMA BEST』を発売。2015年に放送を開始した『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)で知名度を全国区に広げ、今もなお日本のヒップホップ戦線を走り続ける。

画像:DOTAMA

地元の音楽番組で流れた『Deep Impact』のMV

 

栃木県で生まれ育った三兄弟の長男。両親、祖父も教員という教育者の家庭で育ったDOTAMA。一見ヒップホップという音楽には縁遠そうな、その家庭環境について尋ねてみた。

 

「両親が教員だったのですが、男三兄弟なのでやんちゃもできました。ただ、僕が小学生のころに通っていた学校では、まだ校内暴力があって、両親もちょっとピリピリすることがありました」

 

そんなDOTAMAがラップと出会ったのは中学生のころ。幼馴染と一緒に、「Dragon Ash」の『Deep Impact』のMV(ミュージックビデオ)を興奮しながら見たのがきっかけだったという。

 

「『Dragon Ash』さんももちろん格好良かったのですが、フィーチャリングの『ラッパ我リヤ』さんのインパクトにやられました。カッコイイのに、言葉遊びやユーモア満載でラップという表現の自由さ、素晴らしさに夢中になりました。僕の地元は田舎だったので、情報源は街の本屋さんやテレビでした。地元のケーブルテレビの音楽番組で流れたMVを、VHSに録画して何十回も繰り返し見ていたんです。歌詞を全部覚えて学校帰りに歌ったり、そのアーティストさんが他にどんな楽曲を歌っているのか、想像を膨らませるのが大好きでした」

 

 

「Dragon Ash」の『Deep Impact』をきっかけに、ヒップホップにのめり込んで行くなかで、自然と自分たちでも曲を書いてみようとなっていった。

 

画像:DOTAMA

生徒会の合間、夢中で学んだヒップホップ

 

「『キャプテン翼も/イラつく/百点のうまさ』『ジーブラ/シに濁点/棒でフに濁点/ラは濁点は無くて』(ともにキングギドラ『大掃除』)同じ曲を繰り返し繰り返し聞いて、どこでどう韻を踏んでいるのか、研究しました。同じ韻でも歌い方、抑揚の付け方、フロウの違いでまったく違う印象になるのも新鮮でした。そうしている内に自分でもやってみたい、やってみよう!と思ったんです」

 

音楽の授業で出された作詞作曲の課題では、幼馴染と一緒にラップをカセットテープに吹き込んで提出したりもした。

 

「本当にヘタクソで。高校に入ってから、音質もラップも全力で頑張ろうと、マイクを買ってお互いの家でレコーディングをしました。そのときからデモ音源をパッケージングしていましたが、出来は全然でした。でも学校の文化祭でライブをやらせてもらえてありがたかったです。それでも田舎の高校だったので、自分たちの理解者を見つけるのは大変でした。でも高校3年の後半に、ニトロさん(『NITRO MICROPHONE UNDERGROUND』)を聞いている同級生を見つけて。あのときは本当に嬉しかったです」

 

進学校だったという高校時代では、生徒会で会計を担当。それにしても、これまでの経歴は不良のイメージが強いヒップホップとあまりにもかけ離れている。

 

「ヒップホップにもさまざまな格好良さがあります。ハードなスタイルもあれば、ナード(スラングでオタク。ギークの意)なスタイルもある。今もそうですが、この曲を歌っている人が『不良だから好き』『堅気だから好き』というよりも『この曲はヤバイ』『この曲はカッコイイ』という価値基準でいろいろな音楽を聞きまくっていました。ヒップホップはもちろん、聞く音楽すべてが新鮮で、楽しかったです」

 

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