連載
名刺を捨てた女 #地球の広報・旅人・エッセイスト たかのてるこ

スポンサー契約を結んだ「高野照子」と「たかのてるこ」

■ようやく手に入れた制作の切符。被写体は自分

 

しかし入社後、丸1年で奇跡の人事異動。テレビ部に配属され、ようやく制作に携わることになる。硬派なドキュメンタリー作品を作り、ATP賞(全日本テレビ番組製作社連盟賞)のグランプリを獲得するなど活躍を見せる。しかしその傍らで彼女は、自らを被写体にすることで独自の強みを手に入れることになる。

 

「友人のまほりん(作家の吉本ばななさん)が、『動くてるこを映像にすれば天職になるよ』と言ってくれたんです。それで、その気になって、10日間の有給休暇を取って友人のカメラマンと一緒にインドに旅立ちまして」

 

そして、そのプライベートのインド旅映像を自身で編集してテレビ局へ持ち込み、なんと『恋する旅人~さすらいインドOLインド編』(TBS)というタイトルの旅番組として放送されることに。

 

この旅番組がきっかけとなり、「エッセイスト・たかのてるこ」が誕生し、『ガンジス河でバタフライ』でデビュー。のちに、たかの本人が出演と制作を兼ねた旅番組『銀座OL世界をゆく!』が不定期ながらシリーズ化するのである。ちなみに、東映本社が銀座にあるため“銀座OL”と銘打たれた。

 

さらに、旅番組のOAと同時に、紀行エッセイ本を出版するという“ひとりメディアミックス”をスタート。旅番組シリーズは6作が制作され(のちに全作DVD化)、『モロッコで断食(ラマダーン)』『ダライ・ラマに恋して』『キューバでアミーゴ!』『ジプシーにようこそ!』等、紀行エッセイ本も6作を発表して好評を博す。

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■自分の夢のスポンサーは自分

 

映像の中の「たかのてるこ」はハツラツとして、行き当たりバッタリの旅先で出会う人々とがっつり仲良くなり、食べ、呑み、ガハハと笑う。彼女のイメージ通りである。

 

一方、「会社員・高野照子」は、年々忙しくなるばかりの仕事の海を泳ぎ続け、上司という統治者に、人生のカギを握られる日々を過ごしていたという。そんな合間にふっと一息つける唯一の小島、それが「旅」だったのだ。

 

「上司からの年賀状に、『旅ばっかり行ってないで、もっと働きなさい』ってお小言が書いてあるですよ。ちゃんと働いてるのに……。新年早々、イヤミですよね~(笑)。

 

もちろん、旅に出ることを理解してくれる同僚や先輩もいましたけど、やっぱり2週間の旅に出ると『みんなは休んでないのに、自分だけ休んで申し訳ない!』という罪悪感がありましたねぇ。有給休暇は当然の権利なのに、病気と冠婚葬祭以外の理由で休むと後ろめたい……おかしなことですよね」

 

この上司からの“旅ばっかり”発言だが、たかのてるこは当時、数年に一度、やっとのことで2週間程度の有給を取っていたに過ぎない。このために、ほとんど休みなく働いていたにもかかわらず。

 

「会社員『高野照子』は、旅人『たかのてるこ』のスポンサーでした。そして『たかのてるこ』もまた、『高野照子』を生かすパフォーマーでした。何年かに一度、旅番組『銀座OL』を作って、同時に紀行本を出すことを楽しみに、それ以外の番組制作も頑張る、そんなバランスのなかで18年間やっていたんです」

 

そうした映像や筆致から見せる“笑顔の向こう側の事実”を視聴者や読者は感じ取っていたのかもしれない。彼女の人気の根底には、共感があったのだろう。

 

 

≫≫≫「私が私に生まれたこと」を謳歌したい!

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