連載
「個性」とは何か?――ジミー桜井インタビュー【前編】

再現の完成度が高くなるにつれ、ゴールは遠のいて行く

アメリカから一時帰国したときに東京・広尾で行われたトークショーの様子。左から、ラジオ・パーソナリティのジョージ・カックル、ジミー桜井、自動車写真家の小川義文

 

◆“違和感”のない境地

 

──「カバー」、すなわち原曲をデフォルメするのではなく、徹底して「オリジナルの再現」にこだわるわけは?

 

ジミー:仮に、ある景色を眺めるとしましょう。そのとき「森」は、やはり「グリーン」じゃなきゃいけない。「空」は「ブルースカイ」、「夕焼け」は「ピンク」に染まらなきゃダメなんです。

 

音楽だって同様。オリジナルが持つ力やイメージを正確に伝えるには、楽器やフレージング、音色、フィーリングなどを忠実に再現するしか方法はない。ベートーベンなら「混声の合唱」が入ってこそ「第九」なんですよ。「第九」をオーケストラだけで構成してしまったら、いくら演奏が一流であっても、どこか物足りない……。少なくとも僕は、プレーヤーとしてもリスナーとしても、その“違和感”を心地良く受け入れることができません。

 

──ジミーさんのようなアプローチで音楽に対峙するアーティストにとって「極める」とは、どのような境地だとお考えですか?

 

ジミー:僕にとって極めた「状態」、すなわち「ゴール」はないんです。追えば追うほど遠くに行ってしまう……。

 

そりゃあ、高校生のころなんかは“なんとなくできちゃった気分”にもなりましたよ。ひと通りのフレーズをなぞっただけで、「この曲はもう完コピできた!」「これ以上はやることがない」と、悦にひたっていました……。

画像:2枚目

Photo by Diane Lynn

 

今になって考えると、とんでもない話です(笑)。その「完コピできた」はずの曲から、改めて「ああ……この曲って、こんなピックアップのポジションで弾いていたんだ」と発見できたのが、つい2~3年前だったりして……。同じ曲を何千回、何万回聴いても“新しい何か”を常に与えてくれるのがツェッペリンなんです。

 

もしかすると、僕なんかが「ツェッペリンを極める」のは、ドン・キホーテ並みに無謀なチャレンジなのかもしれません。けれど、そのプロセスが途方もない“茨の道”であるからこそ、「一生かけてでもやり遂げてやる!」といった熱い想いも生まれてくるのではないでしょうか。

 

◆「個性」という言葉に宿る曖昧さ

 

インタビューをここまで終えた段階で、あえて触れなかった質問がひとつある。「森」を「グリーン」に彩ることを徹底して貫くジミー桜井にとって、「個性」とはいったいなんなのか?

 

一般的に「個性」は、「オリジナルの再現」が精密であればあるほど“失われてしまうもの”と見なされる。そして、通常「個性的」という言葉は“賞賛の意”として捉えられ、「個性を伸ばす」ため部下や子どもに「森を青くしてみるのもアリなんじゃない?」と促す“寛大さ”は、かつての“ゆとり教育”政策によって日本に根付いた“21世紀の美徳”でもある。

 

だが、「森のグリーンが持つ本来の美しさ」をろくすっぽ追求することもなく「青もアリ」とする、いわば「体系的なデッサンの習練も受けていない者が、いきなりピカソのキュービズムを描く」ような、安易なる「個性至上主義」に“しわ寄せ”は生じないのだろうか?

 

次回のジミー桜井インタビューでは、よりディープに自らを語っていただきつつ、「個性」という名のデリケートかつ曖昧なキーワードの実体に迫ってみたい。

 

>>「個性」とは何か?――ジミー桜井インタビュー【中編】は8月30日(火)に掲載。

 

◆Profile

ジミー桜井

小学校の頃は映画音楽に熱中。14歳から本格的にギターを始め、高校に入学して手に入れた「レッド・ツェッペリン」の『Houses Of The Holy』の一曲目『The Song Remains The Same』でギタリスト人生が一転。絶対コピーできないと思う反面、絶対完全にコピーしてやると決意する。高校卒業後、「プロにならないか」と誘いを受け東京へ。しかし、その現場で「自分の居場所じゃない」と感じて、地元に戻ってサラリーマンをしながら、ツェッペリンのコピーバンドで数々のイベントに出演し、活動を続ける。再び上京し、1994年、米軍横田基地に隣接するクラブ「Club49」に出演、米兵たちから熱狂的な支持を得る。そのときにイベンターが命名したバンド名「MR.JIMMY」で、国内を中心とし、定期的にライブを行う。2014年、アメリカで活動する「レッド・ツェッペリン」のトリビュート・バンド「LED ZEPAGAIN」(レッド・ツェッパゲイン)に加入。以降、拠点をロサンゼルスに移し、日米を股にかけたトリビュート・アクトとして多忙な日々を送っている。

 

●ジミー桜井「公式フェイスブックページ」

●「MR.JIMMY」オフィシャルサイト

 

<<最新ライブ情報>>
ジミー桜井率いる「レッド・ツェッパゲイン」、待望の来日公演。10月21日(金)、10月22日(土)の2日間は六本木の「EXシアター六本木」で、10月23日(日)は大阪の「梅田クラブクアトロ」で熱いライブを繰り広げる。「ロックショー・リバイバル『狂熱のライヴ1973』~4th Noght Of MSG~」の詳細、チケットの申し込みはこちらから。

 

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この情報は2016年8月17日現在のものです。

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