連載
観光特需に湧く沖縄の今 vol.002

那覇の夜を闊歩する、赤提灯はしご酒

2015年6月にオープンした那覇の新名所「国際通り屋台村」。全21店舗のありとあらゆるジャンルの飲み屋が集結している

 

 

■那覇の“夜の顔”に新しい沖縄を見た

 

これまで沖縄観光における那覇のイメージは「玄関口」だった。沖縄をIN/OUTするハブであって、県北部や離島を訪れるときに一泊する、あるいは本土に戻る前夜に泊まるのが一般的な「那覇の使い方」だった。

 

いかにして、那覇での滞在を楽しんでもらうか。沖縄観光に従事する人たちの課題だという。そのひとつの打開策が夜の繁華街にある。vol.1では那覇の“昼の顔”をお届けしたが、今回は那覇の夜の顔をルポする。那覇の新旧の赤提灯街を飲み歩いて、見えてきたものとは?

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「国際通り屋台村」の村長を務める横井聖司さん。屋台村内にある泡盛Bar「島酒と肴 しまぁとあて」の店長でもある。屋台村の顔として、取材にも快く応じてくれた

 

 

ビジターと地元民をつなぐ赤提灯

 

日中、しこたま食べ歩いて膨れた身体を引きずりながら向かったのは、「国際通り屋台村」だ。同所がオープンしたのは、2015年6月。その名の通り、赤提灯を下げたカウンター数席の飲み屋がずらりと並び、さまざまジャンルの食と酒が楽しめる。

 

この場所にはかつて映画館「グランドオリオン」があった。2002年の閉館以降、国際通りのすぐ脇という好立地にもかかわらず、長い間使われることなく放置されていた。

 

全21店舗を取り仕切るのは、屋台村の村長を務める横井聖司さんだ。自身も屋台村内で泡盛Bar「島酒と肴 しまぁとあて」を営んでいる。「沖縄返還から44年。返還後、目覚しい復興を経て『奇跡の1マイル』と呼ばれた国際通りは今まさに変革期を迎えている」と横井さんは話す。

 

「国際通り沿いの大型店は観光客ばかりで、接客もどこかビジネスライク。だからなのか、観光客と地元の人たちとの関わりはそう深くはありません。屋台村には地元のお客さんも多いですし、この場所がきっかけになって観光客との距離がもっと縮まればいいと思っています」

 

オープンして約1年。かつての「グランドオリオン」がそうであったように、地元民の憩いの場として、まずは沖縄の人に知ってもらい、そのうえで観光客も集まる場所にしていきたいと話す。

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どの店舗もコの字型のカウンターで囲まれ、店主、客同士の会話が盛り上がる。早い時間から飲み始めて、屋台村内をはしごする客も多い

 

 

■「こんばんは」で始まるカウンター飲み

 

まず一軒目に入ったのは、島野菜や地元産の食材を使った串焼きや鹿児島焼酎が楽しめる「鷠(フィッシュバード)」。まだ日は沈みきっていないが、早くもカウンターの席は埋まり、酒場ならではの賑わいを見せる。

 

目の前に並んだ食材に食欲が掻き立てられる。その脇で、連れのカメラマン・Sが隣の女性グループに鼻の下を伸ばしている。一杯目から泡盛を注文。すかさず、女性グループとの乾杯の期をうかがうカメラマン・Sだったが、躊躇することなく女性グループから「かんぱーい!」の音頭が。ここは東京ではない。酒場での出会いは旅の醍醐味である。人の心を開く「非日常」がここにはある。

 

一杯目を注文したのも束の間、さっそく2杯目を注文するカメラマンのS。どうやら隣の2人組の女性も東京から来たそうで、決まってこの時期にやってくるという。その奥に座っていた男性グループは地元組。今回の取材は具体的に行程が決まっているわけでもないので、こうした何気ない会話が情報収集にはちょうどよい。

 

カウンター数席のこの店で出会ったのも偶然であるまい。この距離感が自然と客同士を近くする。一店舗目でこの親近感……。あと20店、同じような出会いが続くと思うと、酒もすすむ。横井さんの言っていた地元民と観光客のつながりを早くも実感。旅の夜はこうして深まっていく。

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串焼き店「鷠(フィッシュバード)」。琉球豚巻きや島野菜など、カウンターの中心に食材が並ぶ。泡盛はもちろんだが、鹿児島の酒も取り扱う人気店だ

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店を構えるのは沖縄料理店だけではない。洋食や串揚げ、寿司などもそろう。屋台村オープンには80店のエントリーがあったそうだが、その狭き門を突破した21店舗が暖簾を出す

 

 

 

■移りゆく那覇の歓楽街

 

次々とグラスを空けるカメラマン・Sが意気込んでケータイを出したところ、その雰囲気に勘づいたのか、女性グループは「それではそろそろ……」と店を出て行ってしまった。われわれも引き続き“取材”を続けるべく、店を変えることにした。

 

隣にいた女性たちも屋台村内の別の店に入っていった。われわれが次に入った店は、ステーキハウス「AMERICAN DINER A Sing」。石垣牛や伊江牛など県産和牛を計り売りして提供してくれる。この店がオープンしてから数ヶ月間通い続けているという、はす向かいに座っていたおじさんに話を聞いた。

 

いわく、「奇跡の1マイル」と呼ばれる大繁華街・国際通りも時代の流れとともに変化してきたという。沖縄が返還され、国際通りは目覚しい発展を遂げた。昼も夜も休みなく、活気みなぎる人だかりができ、繁華街と歓楽街が表裏一体となって、昼と夜の顔が混在していた。言うなれば渋谷と歌舞伎町が同じ場所にあるようなものだ。最盛期の50年代には国際通りに7つもの映画館があったというから、その賑わいはさぞすごかったのだろう

 

「国際通りだけじゃなくて、東京の銀座にも『三越』があるんだな!」

 

当時の人は、そんなことを口にしていたという。しかし現在では、水商売を中心にかつて国際通りで営んでいた店の多くは、松山(国際通りのある桜坂から少し離れたエリア)に移動し、大衆向けの居酒屋や昼のお店は国際通りに残り“歓楽街の線引き”が行なわれた。そういう意味で「国際通り屋台村」は、地元と観光客が赤提灯で出会い、より関わりをもつことを可能にした場所といえる。

 

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「鷠(フィッシュバード)」でいただいた串焼きの盛り合わせ(900円)。屋台村全店で注文できる「屋台村オリジナル焼酎」はなんと一杯200円だ

 

 

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「AMERICAN DINER A Sing」では「肉の盛り合わせ」(3500円)を注文。ハンバーグに琉香牛のスペアリブ、伊江牛のステーキがひと皿に。日によって仕入れも異なる

 

 

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屋台村内には物販を行なう「離島マルシェ」があり、沖縄の離島の名産が集まる。「Santa Maria」は伊江島のサトウキビで作られた国産ラム酒だ

 

 

 

DATA

国際通り屋台村
住:沖縄県那覇市牧志3-11-16,17|URL:http://www.okinawa-yatai.jp ※外部サイト


鷠(フィッシュバード)
住:国際通り屋台村内|営:11時~24時|休:無休|URL:http://www.okinawa-yatai.jp/yatai/%E9%B7%A0 ※外部サイト


AMERICAN DINER A Sign
住:国際通り屋台村内|営:11時~23時|休:第一、第三火曜日|URL:http://www.okinawa-yatai.jp/yatai/american-diner-a-sign ※外部サイト

この情報は2016年4月15日現在のものです。

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