連載
観光特需に湧く沖縄の今 vol.001

夏よりも “熱い” 春の沖縄を旅する

沖縄の観光ベストシーズンは春。繁忙期は大盛況の国際通りも、ご覧の通り人通りもまばら

 

 

■観光ハイシーズン=観光ベストシーズンではない

 

真の沖縄ツウからすると、沖縄中心部は春に観光するのが一番とされているらしい。ただでさえ、年々観光客の増え続ける沖縄で、年末年始や夏の行楽シーズンの混雑具合は、はっきりいって本土と変わらないからだ。

 

春の沖縄は2つのハイシーズンに挟まれた谷間のローシーズンだが、気温20度、台風の心配もなく、観光客がいない春の陽気に包まれた今こそ、旅するのに最適なシーズンといえよう。6~10月は8月をピークに台風シーズンの真只中。大型連休時の航空券価格のレートの推移(沖縄への観光客数でいえば1月がボトムとなるが航空券が圧倒的に高い)を考えれば、これからがベストシーズンといえよう。それは観光客として訪れるわれわれだけではなく、繁忙期は詰めかける観光客にてんやわんやのうちなー(沖縄人)にもいえることだ。

 

つまりは、もっとも沖縄への観光客が多い7、8、9月(同時に台風のハイシーズンであるにもかかわらず!)が「観光ハイシーズン」だと一般的には思われているが、必ずしもそれが「観光ベストシーズン」とはいえないのである。

 

■沖縄“エンタメ”県として勢いを増す

 

それに加えて、ここ数年の沖縄の観光トレンドを見ると、“エンタメ”県としての側面を一層強めている。2013年以降、外国人観光客が爆発的に増え、2014年には、国内外からの観光客数は過去最高となった。さらに那覇に「HYATT REGANCY」や本島中部に「ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズ」など、数多くの大型ホテルが新規開業している。また、国際通りには2015年3月に「よしもと沖縄花月」がオープン。「おきなわ新喜劇」など沖縄を題材にした舞台が話題となっている。巷では県内にディズニーランドやUFJの建設が噂され、まさに観光立“県”、「エンタメの沖縄」として、最盛期を迎えようとしている。

 

最初に向かったのは、那覇空港からほど近くにある「琉球温泉瀬長島ホテル」を有する複合施設「SENGAJIMA UMIKAJI TERRACE」。2015年8月にオープンしたばかりで、那覇空港から車で約10分、レストランはじめ30店舗あまりの商業施設、ホテル、そしてビーチがひとつになっている新名所だ。

 

空港から最短距離にあるビーチと言われれば、行かない手はない。那覇空港でレンタカーを手に入れ、真っ先に車を走らせた。ビーチを眼下に望む大パノラマのテラスで“沖縄ファーストバイト”を堪能する。出島のように本島から突き出した地形で、白壁に統一された店舗が軒を連ね、西を向いた傾斜地からは慶良間諸島の島々を見渡すことができる。さぞ夕日も美しいのだろう……。

 

「ズゴゴゴーーーーー!」

 

東京の喧騒を忘れ、おセンチな気分を吹き飛ばしたのは、頭上を通過するジャンボジェット機だ。瀬長島のもうひとつの顔は、空港を離発着する飛行機を見られること。遠望に据える那覇空港の滑走路もなかなか見ごたえがある。

 

空港からの至近のため、夏は大混雑していると聞いたが、これはいい。観光客はまばらで、あくせくした感じはない。昼前の気温は19度。東京で待つ編集部の顔が青空に浮かぶ。

 

 

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大パノラマを一望できる「SENGAJIMA UMIKAJI TERRACE」のテラス。海岸ではビーチパーティーが行なわれるなど、うちなーにも人気のスポット。那覇空港からはシャトルバス(無料)も発着しているので、到着後もしくは帰路に着く前に立ち寄りたい

 

 

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瀬長島で訪れたのは「沖縄そば もとぶ熟成麺」。本島のグルメコンクールでグランプリを獲得した「V3そば」(850円)は、3種の豚の部位(V)をトッピング。うどんの製法を使い一週間熟成させた熟成麺は、沖縄ソバとしては初の試みだ

 

 

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グルメ19店舗、ショッピング8店舗、マッサージはじめサービス施設も充実の「SENGAJIMA UMIKAJI TERRACE」。那覇発着前後の立ち寄りスポットとして、はずせない場所だ。白壁の傾斜地で西側に海を臨む景観は、さながらギリシャのサントリーニ島!?

 

 

■活気であふれる元・闇市

 

「SENGAJIMA UMIKAJI TERRACE」をあとに、次に向かったのは「第一牧志公営市場」(通称、公営市場)。今回の沖縄旅は極力移動せず「那覇市内周辺」で楽しむのがコンセプト。というのも、4月はGW前まで祝日が少ないので、滞在日数が限られる。1~2泊で本島を満喫するには市内周辺でいかに楽しむかが鍵になる。

 

公営市場は、那覇の中心・国際通り沿いのアーケード街のなかにある。この辺りは商店街が入り組んでいて歩いているだけでも楽しい。

 

那覇市内の “ザ・観光スポット”のため、繁忙期は観光どころではない。人がまばらなこの時期だからこそゆっくりとまわりたい。島言葉が飛び交う市場らしい軽快なコミュニケーションと、本土では見ることのできない沖縄ならではの食材。沖縄を感じるにはもってこいの場所だ。

 

かつて公設市場は闇市だった。戦後荒廃した沖縄の地でいち早く復興したのが国際通りであり、別名「奇跡の1マイル」と呼ばれている。当時、この通り沿いには土産物屋、沖縄料理店など、大小の商店が軒を連ねていた。この国際通りを中心に公設市場、栄町市場(第2回でルポ)などたくさんの闇市があり、当時本土では手に入りにくいコーヒーなどの舶来品や米軍物資の横流し品が多く出回っていた。

 

そこにビジネスチャンスを求めて、マチグァー(沖縄の言葉で「市場」の意)・ドリームを実現すべく多くの人が集まった。国際通りは、今では一大観光地だが、その繁栄は「第一牧志公設市場」をはじめとする闇市の存在があったからにほかならない。

 

現在、市場を含む一帯には大小含め数百の商店があるが、観光客の近寄らない地元客でにぎわう商店も存在する。“ザ・観光スポット”の影に、そんな一面があることも覚えていてほしい。

 

 

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レンズを向けると「待ってました」とばかりに満面の笑みの公営市場のおばぁ。手にしているのは、近海で獲れたアバサー(ハリゼンボン)だ。フライにして食べるとおいしいという。閑散期で手持ち無沙汰らしく、こちらの立ち話にも付き合ってくれた

 

 

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1階に精肉部、鮮魚部、生鮮部など生モノがあり、購入したものを2階の食堂で提供してくれる。おばぁのお任せセットでこのなかから5種の魚介を刺身、フライ、汁物に調理。階上の「キラク」でいただいた

 

 

画像:C3

沖縄三大高級魚であるアカマチ(フエダイ)と沖縄県の県魚・グルクン(タカサゴ)、マグロの刺身三点盛。アバサー(ハリセンボン)のから揚げ、伊勢エビの味噌汁。占めて1500円。ビール2杯で800円

 

 

■太古の歴史を物語る沖縄の森

 

腹ごしらえが済んだら、那覇市周辺のアクティビティを楽しみたい。マリンスポーツは少し早いとなれば、目指すは森だ。那覇空港から車で約30分、「ガンガラーの谷」がある。自然のなかに鎮座する巨木・カジュマルが見られる亜熱帯の森だ。

 

閑散期とはいえ賑やかな都心部を抜けて、車を走らせること数十分。大きな県道沿いで「ガンガラーの谷」の看板を発見した。車を停め、奥地に進むように谷を下ると、鍾乳洞が大きな口を開けて待っていた。

 

谷の入り口には、天然の鍾乳洞をそのまま利用した「ケイブカフェ」がある。ここから沖縄、いや日本のいにしえの歴史が始まる。鍾乳洞を抜けると、その先で一気に視界が広がりジャングルが姿を現す。鬱蒼とした沖縄の森が、少し湿っぽい風に揺られてユサユサと揺れる。「ガンガラーの谷」は、もとは全体が鍾乳洞だった。その天井部分が崩れ落ちたことで渓谷となり、その谷底を進むことになる。

 

 

■日本人のルーツをたどる2万年の旅

 

この辺りでは、約2万年前に暮らしていたとされる旧石器時代の人類「港川人」の人骨が発見された。その発見場所から、ほど近いのがここ「ガンガラーの谷」だ。

 

長きにわたって手つかずの場所だったが、「港川人」の居住跡なども残されている可能性があることから、近年は発掘調査が行われ、2014年に2万年前の人骨と貝の道具(貝器)が発見された。これは国内初、国内最古(これまでは縄文時代が最古)の埋蔵人骨で、日本人のルーツにつながる大きな発見だった。また、この発見により、旧石器時代の人々の暮らしとは異なる生活様式があったことも分かってきた。

 

この発見がいかに大きなトピックだったか、お分かりいただけると思うが、特筆すべき点は、さらに2つある。ひとつは、「ケイブカフェ」という商業施設がすぐそばにありながら、歴史的な発見がなされたこと。そして、もうひとつは近年まで近くの前川集落では、港川人のようにカニを獲り当時と同じような食生活をしていたこと。「ガンガラーの谷」は人類の歴史と現在の暮らしが交錯する神秘的なスポットなのである。

 

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「ガンガラーの谷」はツアーで散策することができる。1日4回(10:00、12:00、14:00、16:00)、約80分1kmのコースとなる(2200円)。港川人の発掘現場からカジュマルの木、大小の鍾乳洞が見わたせる

 

 

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ツアーの集合場所となる「ケイブカフェ」。もちろんツアーに参加しなくても飲食が可能だ。地下水を使った沖縄ブレンドのコーヒー(350円)や、各種南国のフルーツを使ったジュースを取りそろえる

 

 

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ツアーには必ずガイドが同行する。今回同行してくれたのは、ガイド歴3年の諸見正太さん(27歳)。この時期の「ガンガラーの谷」では、頭上から垂れるカジュマルの真っ白い根が見えることも。春ならではの見所だ

 

 

DATA

SENGAJIMA UMIKAJI TERRACE

住:沖縄県豊見城市瀬長174-6|TEL:098-851-7446(一般社団法人 瀬長島ツーリズム協会)|営:10時~21時|休:無休|URL:http://www.umikajiterrace.com ※外部サイト

 

沖縄そば もとぶ熟成麺

住:SENGAJIMA UMIKAJI TERRACE内|TEL:098-987-4554|営:11時~20時|休:無休|URL:http://www.umikajiterrace.com/profile/motobu ※外部サイト

 

那覇市第一牧志公設市場

住:沖縄県那覇市松尾2-10-1|TEL:098-867-6560|営:8時~20時|休:毎月第4日曜日|URL:http://kousetsu-ichiba.com ※外部サイト

 

ガンガラーの谷

住:沖縄県南城市玉城字前川202|TEL:098-948-4192|営:9時~18時(予約受付)|休:無休|価格:2200円|URL:http://www.gangala.com ※外部サイト

この情報は2016年4月8日現在のものです。

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