連載
vol.31┃G-SHOCK 35th Anniversary

「G」の遺伝子がたどり着いた、サファイアガラスへの挑戦

■非常識に立ち向かい続けたG-SHOCKの次なる挑戦

 

初代G-SHOCK「DW-5000C-1A」(1983)および、耐低温仕様モデル「WW-5300C」(1984)の開発以降、G-SHOCKの部署を離れた伊部さん。その後、別企画としてフルメタルのG-SHOCK「MR-G」(1996)を手がけることとなる。

 

G-SHOCKが若い子たちに支持され始めているのを見て、大人になってもファンでいてもらうためにはフルメタルモデルが必要だなと思ったんです。でも、落としても壊れないフルメタルモデルができるはずがないことは、自分が一番理解している。

 

だからこそ、会社にもチームメンバーにもメタルのG-SHOCKを作るとは言わずに開発をスタートしたんです。しかし、当然のようにチームが向かった先はフルメタルのG-SHOCKでした。結果的に、みんなのおかげで完成することができました」

 

「MR-G」のバックストーリーも面白い話が多いのだが、とにかく伊部さんは「非常識」を追求し続けてきた男なのだ。

 

G-SHOCKの場合、お客さまの期待とイコールなものを作ってもダメなんです。皆さんの想定をはるかに超えたものでないといけない。”そうきたか!”と思わせて、初めて商品化されるんです」

 

現在、レギュラー商品には一切口を出さない伊部さんだが、企画版のようなものは不定期で手がけている。近年、ファンをもっとも驚かせたのは、2015年の「バーゼルワールド」でお披露目したコンセプトモデルの “金無垢G-SHOCK” だ。

 

「一度はコンセプトモデルを作ってみたいと思っていたんです。そこで思いついたのが金無垢。でも、金無垢だけに実験ができないんですよ。うっかり凹んでしまったら、その部分の金はどこにいった!? とか騒ぎになっちゃうでしょ」

 

世界にたった1本の ”金無垢G-SHOCK”。もちろん販売はできないが、どうしても欲しいという人が思いのほか多かった。納得できないファンからは、「今度は販売可能なぶっ飛んだ製品を作ってくれ」と熱心に頼まれたという。

 

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2017年、ニューヨークで行われた「SHOCK THE WORLD」で発表された今までになかった新モデル。G-SHOCKの意志を継ぐ度肝を抜くモデルとなった(写真提供:カシオ計算機)

 

 

「ぶっ飛んだモデルってなんだろう? とすごく悩みました。『時計は壊れる』という ”常識” から、壊れない ”非常識” に挑戦したのがG-SHOCK35周年を迎えるにあたり、その原点に戻ろうと思ったんです。

 

たどり着いた答えは、『ガラスは割れる』という常識に挑戦すること。そこで、オールサファイアガラスのG-SHOCKを企画しているんです。いま作っている最中ですが、どうなるかわからないですね」

 

オールサファイアガラスのG-SHOCKは、2017年11月のニューヨーク「SHOCK THE WORLD」でコンセプトモデルとして発表され、その衝撃は世界を駆け巡った。どう見積もっても値段は8桁を超えるという。しかも、まだ完成はしていない。

 

「やっぱりね、ガラスは割れるんですよ(笑)」

 

「あたり前だろ!」とツッコミたくなるが、これこそが非常識に挑戦してきたG-SHOCKの遺伝子。簡単に買えるモデルではないが、ガラスなのに割れない「非常識ウォッチ」が近々誕生することは間違いなさそうだ。

 

 


◆Column◆“壊れない”G-SHOCK唯一の弱点とは?

G-SHOCKの発売から35年、ユーザーの間では経年劣化によりプロテクターやベルト部分が加水分解してしまうという話がでてきている。もちろん伊部さんも承知だ。

G-SHOCKの素材をどうするかという段階で、国内外のあらゆる文献を調べ上げ、さまざまな素材で実験し尽くしました。その際に、医療器具にウレタンが使われているというのを見つけたんです。ただ注意書きとして、複雑な形状で成形はできないと書かれていました。

とはいえ、私はどうにかなるだろうと。それよりも、人体に一番優しい素材を使いたいと飛びついたんです。いくら頑丈でも、皮膚がかぶれてしまっては意味がないですから。そこで成形メーカーさんにお願いしたところ、やはり文献通り、チューブ型など簡単な形しかできない。不良品の山が私のもとに届けられました。

でも、安心・安全の立場から材質変更はしない、形状の変更もしない、その代わり長いお付き合いをしましょうと無理を言って、どうにかカタチにすることができたんです」

ここでも非常識に挑戦する「G」の遺伝子はいかんなく発揮されていたのだ。

「成形が難しいという欠点以外に、経年劣化によって白っぽいものは黄色く変色(黄変)してしまうことがあります。そこはだいぶ改善されてきました。しかし、最大の欠点である加水分解はまだまだ課題が多いですね。

ウレタン以外の素材を使えば回避できますが、現時点で安心・安全に優れたウレタンに勝るものはない。シリコンという選択肢もありますが、磨耗しやすいんです。その点、ウレタンは磨耗に強い。そんなこともあって、画期的な新素材が誕生するまではウレタンを使用していくと思います」
 

 

 

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この情報は2018年2月28日現在のものです。

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