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Urban Outdoor Catalog vol.31

生誕35周年、常識を覆し続けるG-SHOCKの次なる挑戦

1983年にデビューした初代G-SHOCK。「時計は落とすと壊れる」という常識に挑み、世界初の「壊れない時計」として、今からちょうど35年前に誕生した。それまでの“当たり前”を覆した商品であったにもかかわらず、広告予算もなく、発売から7~8年間はまったく売れない時代だったという。

 

しかし、90年代に入ると空前の大ブームを引き起こし、2010年代の現在は世界各国に多くのファンを抱えるほど成長した。その軌跡を生みの親である株式会社カシオ計算機の伊部菊雄さんに話を聞いた。

 

 

撮影:佐坂和也 文:富山英三郎

 

G-SHOCK

CASIO

G-SHOCK

落下強度10m、防水性能10m、電池寿命10年の「トリプル10」を掲げ、1983年に誕生。「壊れない時計」としてアメリカで大人気となり、逆輸入される形で1990年代に日本でも一大ブームを巻き起こした。2017年には累計販売本数1億本を突破。2018年にデビュー35周年を迎えた。

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■クビを覚悟した窮地で閃いた革新的なアイデア

 

たった1行、「落としても壊れない丈夫な時計」とだけ書かれた新製品の提案書。G-SHOCKの歴史はそこから始まった。提出したのは、当時設計部門に在籍していた28歳の伊部菊雄さんだった。

 

伊部さんはある日、人とぶつかって腕時計を落としてしまう。床に落ちた瞬間、部品が飛び散るほど大破。そのとき、「時計は落とすと壊れる!」という常識が目の前で実証されたことに感動を覚えた。ならば、「落としても壊れない時計を作ってみたい!」。それがたった1行の提案書を生んだのだ。

 

しかし、本来なら基礎実験を行い、ある程度の見通しをつけて提出するのが一般的。その工程をすっ飛ばし、ただ「思い」だけを書いて提出。なぜかこの企画が通ってしまう。苦難の始まりだった。

 

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当時伊部さんが提出した提案書が再現されている。構造案、スケジュールなどは一切白紙だ

 

 

「時計の周囲に衝撃吸収のゴムをつければできるだろうと思っていたんです。浅はかでしたね。サンプルを作っては、会社3階のトイレの窓から1階まで落とす実験をずっとしていました。200300個は作ったかな、でも必ずどこか壊れるんですよ。最終的にソフトボール大のサイズまでゴムをつけたら壊れなかったけど(笑)」

 

もちろん、そんな巨大な製品が売れるわけもない。開発から1年以上試行錯誤を続けてもうまくいかず、やがて完全に行き詰まりをみせる。決められた発売日は半年後、もはやどんな理由で会社を辞めるかばかり考えていた。

 

翌週に形にならなければ辞表を出そうというある日曜日、公園でボール遊びをする子どもを見てアイデアが閃く。ボールの中で時計が浮いている様子が見えたのだ。そのアイデアをもとに、時計の心臓部を点で支えることで宙に浮かせて衝撃を緩和する構造を完成させ、1983年4月、ついに発売が開始される。

 

 

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