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Vol.72 涼しい山間で月夜の宿坊体験 忙しい日常の合間をぬって出かけたい、知る人ぞ知る隠れ宿を厳選。たった独りで英気を養うにも、大事な人を誘って、一夜の逃避行をするのにも…。 |
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ガイド厳選の「日本の宿」を全国からご紹介。隠れ家、露天、貸切風呂…大人の宿選びに |
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埼玉の宿坊で座禅体験 | | 副住職による坐禅風景。警策には励ましの意味がある。 | 西武新宿線飯能駅からバスに揺られること、約60分。渓谷を辿った一番奥の村落に、曹洞宗福王山「正覚寺」はあった。
身近な首都圏に座禅・写経のできる禅寺の宿坊があるからというので行ってみた。本堂脇の事務所にて手続きを済ませ、早速本堂に。日帰りで座禅をしに来る方もいるようだ。 ただし今日は、「最初の申し込みが個人の男性だったので、宿泊は男性のみ」だそうで、あくまで宿泊は男女別に2〜3組まで。酒・タバコはご法度である。 学校や企業の合宿も受けるそうだが、その際は、本堂は男性、別棟を女性のように分けるとのこと。住職は優しいが、禅寺なので規律には厳しい。
本堂の隅に荷を置き、日帰り座禅の方々と談笑するうち、15時半から座禅。ビデオで作法説明のあと、住職の手ほどきで半跏趺坐を組む。 止静鐘の音とともに、座禅開始。40分のうち最初の20分は、周囲が多少気になるし、足はしびれ、汗はぼたぼた。まるで、心頭滅却できていない。いつ「励まし」のしるしである警策(きょうさく)を打たれるのか、どきどきしている。 が、後半20分には汗も引き(この日は摂氏34度であった)、半ばあきらめの境地(私にとっては「無」に近い)を味わうことができた。草いきれ、虫の音、鳥の羽ばたきが何か懐かしく感じられた。
 | | 静かに般若心経を写経する。心を込めて書くことが大事。 | 無事、座禅も終了し、18時に宿泊者だけの薬石(夕食)。箸袋に記された「五観の偈」を唱えてから、沈黙していただく。
精進料理なので、一切殺生はしていないのに、カツがある。後で聞くと、山芋をつなぎに使い「麩を揚げたもの」とかで、美味。 沢庵は一枚最後まで残しておく。全て食べ終わったら食器に湯を注ぎ、沢庵できれいにして、順々に食器に注ぎなおし、最後に湯を飲み、沢庵を静かに噛み、食器を重ねて食事終了。
本堂を襖で仕切ると小さな個室ができる。19時の開浴(お風呂)の後、21時には開枕(就寝)。
5時に起床の後、仏前で正座し勤行。続いて、朝の座禅を40分。 小食(朝食)をいただき、本堂の作務(掃除)。 8時半からは、般若心経を唱えてから「写経」が始まる。一字一句、下に敷いた手本を写すこと小一時間。最後に、祈願がある方は願いを書き、仏前に供えて終了。
一度体験すれば、作法にも自信がつく。10時に寺を後にするときには、やり遂げた充実感があった。 ご住職に聞くと、30代女性の1〜2人旅が多いという。個室にしても、朝には「皆かたまって寝ていた」こともあるとかで、自己をみつめに来る方々の思いは、お互い語り尽くせないものなのだろう。
さて、名栗渓谷の爽やかな風を後に、次なる目的地高野山に向かった。
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